Be a Boss

起業家になる覚悟を決める



投稿日:2022年3月24日 | 最終更新日:2024年3月24日

起業すると上司はいなくなる

起業すると上司はいなくなります(場合によっては、同僚も部下もいなくなります。孤独です)。

「うるさい上司がいなくなって最高だ!」なんて、良いことばかりではありません。

上司がいないということは、自分が最終的な責任者だということです。最終判断の責任は、いつでも自分に降りかかります。このことは、起業して時間が経つにつれ、どんどん重くなってきます。ですがこの重さは、起業する前にはなかなか実感できないことでもあります。


孤独は人の判断力を鈍らせる

孤独

起業家は孤独です。

上司もいない、部下もいない、同僚もいないことは初期には珍しくありませんし、それどころか、本当に初期にはお客様も取引先もいないこともあり得ます。全くの一人ぼっち、孤独です。

また、組織が大きくなって部下や同僚ができても、また別の孤独を味わうことになります。経営者は、大きな責任を負い、自分の判断が経営を左右するストレスに晒され続け、にも関わらずそれを表に出すことが難しい立場であるためです。

「寂しいから人を雇う」というのは、起業したばかりの方からよく聞きますが、「寂しいから」という理由で雇った人は、たいていの場合、すぐにお別れになっています。離職の理由は一つではありませんが、そもそも人を雇用するにはお金がかかります。「寂しいから」で続けられるものではないのです。


アドバイザーは必要か

アドバイザー

そういう経営者の需要に応えるために、経営コンサルタントなどの職業があるともいえます。経営コンサルタントに求められることは専門知識だけではなく、むしろ孤独な経営者の相談相手、話し相手としての役割であったりもします。

起業家も同じです。

不安や孤独感から、ついついアドバイザーを探してしまいます。

アドバイスを受けることは悪いことではありません。客観的な視点から事業の長所や欠点を指摘してもらう機会は貴重です。ですが、アドバイザーに依存してしまったり、アドバイスに振り回されすぎないように気をつけてください。

その客観は、あなた以外の誰かの主観でしかないかもしれないのです。このことは常に念頭に置いておいてください。

その人があなたよりも多くの知識を持っていたとしても、あなたよりも正しい判断をするとは限りません。もしくは、その人は、よく知らないことでも、さも知っているかのように話さなければならないと思い込んでいるかもしれません。起業家としてのあなたは、それを見極める必要があります。

起業支援のアドバイスを受けに行っても、担当者によって真逆のことを言われたりするのはよくあることです。
また、同じ事業計画でも、それを作ったのが男性か女性かで、評価が変わることもあります。大胆な事業計画は、男性では「意欲的、将来性が見込まれる」などと評価されがちで、女性では逆に「非現実的、具体性がない」などと評価されがちです。これは個人の印象ではなく、研究されてもいます。

「著者が誰か分かっていない状態で論文の内容を評価すると、女性が執筆者である論文の方が評価が高い。しかし、著者が誰か分かった瞬間、女性が執筆者として加えられている論文は評価が下がる」

ゴールドバーグ・パラダイム

このことは、マイナス評価をされてしまう女性にとっても重要ですが、男性にとっても、過大評価をされて大きな負債を負うことに繋がったりもしますので、心に留めておいて損はありません。

様々なアドバイスに振り回されず、かといって耳に心地よい意見だけを聞くことを避けるのは、なかなかに難しいことです。起業支援の相談は、経営者としてアドバイスの取捨選択をする練習をする、判断の訓練をしている、くらいの意識をもって利用するのが起業家としての心構えではないでしょうか。


専門家も間違えることがある

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忘れてはいけないことは、「専門家も専門分野について間違えることがある」ということです。専門家も人間なのでしかたがありません。私のこれまでで一番強烈な体験は、ある士業の方が認知症になってしまった時です。あるときから突然、おかしな数字が入り込んできたので分かったのですが、クライアントの方が気付くより先に税務署が気付いてしまいました。こういう場合でも、追徴課税はやってきます。気付かなかった経営者の責任です。

こういうことは避けようとして避けられることでもありませんので、できるだけ早く気付けるように、自分の側も知識や経験を積んでおかなければいけないなと思わされた貴重な経験でもあります。

士業などの専門家は、あくまでクライアントの代理として仕事をしているので、その結果は当然、クライアントの方に帰属するのです。そうなのです、最終責任者は経営者・起業家であるあなたなのです。士業の「先生」ではありません。

私は監査の仕事を通じて、専門家に間違いを指摘するということを何度もしてきました。
指摘されたときの態度も様々でしたので、良い経験になりました。その方のクライアントである経営者の方の手前、絶対に間違いを認めないという方もいらっしゃいましたが、そういう言動からクライアントの方のその方への信頼度が上がるということは、まずありませんでした。指摘を真摯に受け止め、早急に対応するのがクライアントにとって最善ですから、それができる人が信頼されるのは当然です。

自分が経験した事例の詳細をお伝えすることはできませんが、専門家も間違える、専門家の間でも意見の相違があるという例をお示ししておきます。

「えええええ!?」と思われましたか?

こういうことは日常茶飯事です。訊く相手によって回答が違うということは、当たり前に出てきます。

誤解しないでいただきたいのですが、間違えるかもしれないから専門家の意見には価値がないということではありません。あくまで、経営者であるあなたの判断の一助になってもらうのです。知識や経験の面であなたを助ける役割の人であって、あなたに正しい答えをくれる先生ではないのです。(ですから私は、士業の方を「先生」と呼ぶのは、経営者にとってあまり良いとは思いません。)

依存するのではなく、力を借りるのです。 例えば、あなたに右腕となる経営幹部がいたとして、間違える可能性があるからその人には価値がないと思いますか? 専門家も同じです。専門知識であなたを支える経営幹部のようなものだと考えましょう。先生ではなく、右腕になってもらうのです。


起業する人に絶対に必要なのは、自分で判断する「覚悟」

夜明け

「専門家も間違えるなら、誰に聞けばいいの?」と思われましたか?

どの意見を採用するかは、あなたの判断にかかってくるのです。

繰り返しになりますが、上司がいなくなるということは、全ての最終判断が自分にかかってくるということです。 自分の決定に対して自分が責任をとるということは当たり前に思うかもしれませんが、組織の中にいると意外とそうでないことがあります。責任をとっていると思っていても、実質は違ったり、背負う覚悟が違ったりするのです。


自分で判断するために、一次資料を調べること

図書館

「覚悟」が必要といいましたが、覚悟だけではいけません。判断を裏付けるものも必要です。

そのためにも、一次資料を調べる習慣をつけましょう

何らかの事項に関する資料のうち、独自性がある大本の資料や原典、元の文献そのものなどを指す表現。これに対して、一次資料について解説したり、一次資料を加工・編集した資料は「二次資料」と呼ばれる。

一次資料(いちじしりょう)とは何? Weblio辞書

例えば、前記の「役員の出張手当支給について(役員報酬ゼロの場合)」| 税理士相談Q&A by freee (advisors-freee.jp)の例だと、一次資料は何にあたるのでしょうか?

国税庁、もう少し身近なところで、所轄の税務署です。

例示の関係だと、国税庁のタックスアンサーで検索してみると、次のような事例が出てきます。

「それぞれの情報を組み合わせると、答えはこうなるのかな?ということは分かっても、そのものズバリなものがない」という場合は、税務署に訊けばいいのです。

国税に関するご相談は、国税局電話相談センター等で行っていますので、税についての相談窓口をご覧になって、電話相談をご利用ください。

国税庁

国税庁のウェブサイトにもこのように書かれていますので、遠慮なく訊いてみましょう。

税や法律、補助金や助成金のことでも、国や地方自治体に関わることで分からないことがあったら、その所轄庁(その制度や法律を取り扱う役所)に訊くのが、最終的には一番信頼がおけます。私も監査に携わっているときは、それぞれの法や通達の所轄庁にはお世話になりました。

間違えることもあるという意味では民間の専門家と変わりませんが、彼らの回答には「所轄庁の回答」としての責任があります。

ですので、できるだけメールなどの形に残るもので問い合わせるか、電話のみの場合は、何時、何処の誰に訊いて、どのような回答があったのか、必ず記録しておきましょう。

それが役に立つ時はあまり来て欲しくありませんが、来てしまったときには、役に立ちます。

最終的には、自分を守る一番力強い味方は、自分です。

※当社が作成している記事については、できる限り、一次資料にあたる所轄庁の該当ページへのリンクをお示ししています。
行政機関の説明ページは分かり難いことが多いので、行政の解説についての解説が必要になってしまうのですが、元資料を示すことは大切だからです。

⇒ 起業の目的にあった事業を考える