ミーティング

事業計画を作る



投稿日:2022年3月25日 | 最終更新日:2023年11月6日

自分の希望収入を決める

収入増加

起業の目的にあった事業を考える「事業の型(お手本)を決める」で、事業の型(お手本)は決まりましたでしょうか?

型は「業種別開業ガイド」の中にありましたか?

業種別開業ガイド」には、収益の目安も載っていますが、そこは確認されましたか?

そして、その収益はあなたの希望とあっていましたでしょうか?

事業計画を作っていく上で真っ先に決めるべきなのは、「自分の希望収入」又は「必要収入」です。
その数値に届くように計画を作らなければ意味がないからです。いくら達成できるからと言って、「年間360日、1日12時間働いて年収120万円」の計画では作る意味がありません。

副業だから利益が低くても問題ないという場合は、携わる時間が副業の範囲内で済むように、その事業にかけられる時間を最初に決めておきましょう。


商品・サービスを考える

商品陳列

事業の型と目指す収益の額が決まったら、収益を作るための商品を考えましょう。

まずは主力となる商品から考えて、脇を固める商品を考えていきますが、初心者が一から考えるよりはまずはパクリ元を探しましょう。薄々気付かれてきたかもしれませんが、このガイドでは「真似る」ことは「学ぶ」ことだと考えていきます。

誰かが調査や試行錯誤を重ねて作ってきたものがあるのですから、その力を借りようということです。やめよう!車輪の再発明。
「上手くいっている事業を真似れば上手くいくというのは間違い」ということはよく言われていて、それは全くもって正しいですが、「真似ることは学ぶこと」です。どんなに独創的な書道家でも、最初はお手本を真似ることからはじめたはずです。ピカソだって、デッサンからはじめています(しかもものすごく上手です)。

「真似ればうまくいくのではなくて、真似ることで上手くいく方法を学ぶ」のです。

ということで、決めた業種で目標とする会社、お店を見つけて、その商品・サービスを研究することからはじめましょう。

主力商品・サービスは何か、どのような商品・サービス構成にしているのか、それぞれの価格帯は?
できることならどういう理由でそうしているのかも考えてみます。

それから、真似られるだけ真似て、自分の商品・サービス企画を作っていきます。現実的に同等の商品・サービスを用意できるかという問題はありますが、そこはできる限りがんばるということで、企画の段階では理想の形を作ってみましょう。


ターゲット顧客を考える

ターゲット顧客

ここまで来るともうおわかりでしょうが、目指すことにした会社・お店の顧客構成を研究します。

ここで注意していただきたいのは、「その商品・サービスを使う対象(人とは限らない)と購入する人は別であることも多い」点です。

ペットフードを食べるのはペットでも購入するのは買い主です。この場合は分かりやすく、買い主が顧客だと考えますが、もう少し、利用者・購入者、両方の要素を考えなければならない場合もあります。例えば、子供用品や学習塾の場合、介護用品の場合も当てはまります。

こういった場合は、購入者だけを顧客と考えると少し視野が狭まってしまいます。購入を決定するのは購入者、狭い意味での「顧客」ですが、受益者(子供や被介護者)は、その決定に影響を与えるので、そこを考慮に入れておくと、次の「ターゲットにリーチする方法」がより良くわかることもあるかもしれません。

また、ターゲット顧客の規模を調べる上でも購入者と受益者の関係を頭に入れておくべきです。学習塾を開くための場所を決めるのには、親の数より対象となる子供の数を調べた方が的確です。ただし、親の所得なども考えるべき要素なので、購入者と受益者の両方を押さえておく必要があるのです。


ターゲットにリーチする方法を考える

ターゲット顧客にリーチ

ごく簡単に言うと、「誰にどのような広告を打っているか」です。もちろん、真似る相手、目指す会社やお店がです。

どんな広告を出しているか、できるだけたくさん、探せるだけ探してみてください。そしてそれぞれ、想定する範囲に出すのにどれだけかかるか、相場を調べてみましょう。

範囲というのは、ポスティングなら地域、道路看板なら場所と数、ラジオなら局ごとの時間と回数、新聞や雑誌なら誌名や広告の大きさ、ランキングサイトへの掲載料、リスティング広告ならキーワード毎のクリック単価、などです。今は本当に便利で、「ポスティング 費用 相場」などで検索すれば、すぐに広告が現れます。

広告については費用だけでなく、それぞれの平均的な効果指標も調べておきましょう。
いろいろな指標があるので、時間がない、数字に関する調べ物が苦手な場合は、費用対効果、広告費用の回収率くらいは抑えておきましょう。やれる広告を全てやるだけの資金があることはまれですので、費用対効果の高いものから実施することになるからです。

無料で掲載してくれるタウン誌やミニコミ誌、企業や団体などの福利厚生部署への紹介ルートなども、探してみると意外と見つかります。


必要な設備を考える

写真撮影機材

商品・サービスを提供するのに必要な設備を列挙してみてください。

店舗、什器、食器、調理器具、レジ……店舗がない場合でも、PCや通信設備、バックスクリーン、プロジェクターなどなど、かなりいろいろな物が必要になってくるはずです。それら全てについて、相場を調べる必要があります。

その中で、特殊な物や高額なものが有る場合は、安価に手に入れられる方法があるかも調べた上で、そもそもそれを手に入れることができるかどうかも考えなければなりません。

中古品については、耐用年数の問題も考慮に入れる必要があります。安価に入手しても短期間しか使えなかったり、修理費が高くついてしまっては意味がありません。

設備を揃えられなくて商品・サービスを考え直す必要が出てくる場合もあります。そういうときは、その諦める商品・サービスが主力の場合は、最初から考え直した方が無難です。そこで強引に推し進めると、せっかく上手くいっている会社・お店を研究したことが意味をなさなくなってしまうかもしれません。


固定費を考える

不動産

「固定費といわれても、どれが当てはまるのか分からない」というご意見も伺ったことがありますが、シンプルに言うと「休業していてもかかるお金」です。
店舗や事務所の家賃、光熱水費、電話、インターネット、人件費、社会保険料などです。

これらをできるだけ低く抑えることは、リスク回避のためにも重要です。

黒字化するまでには早くても半年以上かかるのが通常ですので、その間の費用が高ければ高いほど、立ちゆかなくなる確率が上がります。
特に店舗では、契約期間分は廃業しても家賃などを払わなければなりませんので、注意が必要です。家賃を考える時は、必ず、契約期間と違約金などの附随する費用も計算に入れておきましょう。

実店舗・事務所が必要ない事業で、自宅の住所で起業することができない場合は、バーチャルオフィスという選択肢もあります。

法人登記ができるバーチャルオフィスの失敗しない選び方 | 地域と条件でバーチャルオフィスを一度に比較・検索


固定費の中で一番大きいのは、多くの場合人件費です。

ですので、人を雇うときはどれだけ慎重になっても足りないくらいです。

俗に言う「誰にでもできる仕事」ほど簡単に雇う人を決めてしまいがちですが、決める前に「そもそも雇用する必要があるかどうか」考えましょう。だれにでもできるのなら、アウトソーシングできないでしょうか?

例えば事務の仕事などは、事業の規模が小さい内は、事務員一人分もないことがほとんどです。よく聞いた話では「事務の仕事は[そこにいる]ことも仕事だ。電話番だって必要なんだ」ですが、電話番て、本当に必要ですか? それこそ電話代行もありますし、自分でできない事務のアウトソーシング費用がパートタイムで事務員を雇うよりも高くつくようなら、人を雇うことを考えましょう。

人を雇うということは、給与などの費用だけでなく、教育や監督にかかる時間もかかります。


広告費を考える

アイスクリーム看板

前の記事で調べたターゲットにリーチする方法に基づいて、実施する広告とその量、頻度を考えます。

必要な成約数(商品・サービスが売れる数)を得るための広告の量と、そのためにかかる費用の計算が必要です。とはいえ、それほど正確に出せるものではないので、業種の平均的な広告費用の割合を調べて、それを上限とする方法もあります。ポスティングやリスティング広告など、数値が調べやすい媒体から積み上げていき、上限額との差額でできることを探します。


仕入・外注費を考える

仕入

商品・サービスを提供するためにかかる費用です。

できるだけ費用を抑えることは基本ですが、あまりにもそこにこだわってしまうと、商品・サービスの質を落とすことにも繋がりますので、さじ加減が重要です。

内製ができると強いのですが、人を雇って内製すると人件費という固定費がかかってきますので、どちらが得か計算してみてください。
固定費は前項でも触れましたが「休業していてもかかる」ので、今回のコロナ禍のような予期せぬ災厄の場合には重くのしかかってきます。 かといって、仕入・外注に頼り切ると、その仕入れ先・外注先に生殺与奪の権を握られることになりますので、本当に難しいところです。自分が提供できる商品・サービスから起業すべきといわれるのはこのためです。

ですが、そこにこだわっていてはできることが限られてしまいますので、現実的な落とし所を考えるのも経営者としての力ではあるでしょう。


損益分岐点を計算する

計算

設備費、固定費、広告費、仕入・外注費が分かったら、それを元に損益分岐点を計算してみます。

損益分岐点とは、利益がゼロになる点のことです。売上高と費用が等しくなり、損益がゼロとなるときです。つまり、このときの売上高を超える売上を作ることができれば、黒字化することができるわけです。

手計算するのは大変なので、簡単なExcelファイルを用意しました。ダウンロードして、ご利用ください。テーブルと数式が設定されていますので、項目と数字を入れれば自動で計算されます。この損益分岐点計算シートには売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益もでるようになっていますので、最初に決めた希望収入を達成するにはどれだけの売上が必要か計算してみてください。


商品・サービスの価格を決める

価格帯

これまで考えてきたことを整理してみましょう。

  • 希望収入を達成するための売上を作るためには、商品・サービスの価格をいくらに設定してどれだけ売ればよかったでしょうか?
  • その価格は、見本とした商品・サービスの価格と比べて高いですか?安いですか?同額でしたか?
  • 販売数は現実的ですか?
  • 前に調べた広告費の費用対効果から計算した数と合っていますか?

見本とした商品・サービスよりも高額だったら、同額まで下げて計算し直してみるべきです。その時の販売数は、広告費から算定できる額ですか?

もし、これらの数字がかけ離れていたら、事業規模が小さくて規模の利益がきかないか、あるいは何か重大な見落としがあると考えてみるべきです。

儲かっている会社・お店をお手本にして考えた案を元に計算して損益が上手くいかないならば、計画を考え直した方が無難です。規模の利益がきかないことが原因の場合、最初から規模を大きくすることはよほどの資力がないと無理なので、その事業はリスクが高すぎると判断できます。

以上を考え合わせて、商品・サービスの価格と販売数が妥当な数字だったら、その金額を販売価格と決めましょう。


事業に「必要な強み」を考える

強み

創業セミナーや事業計画書作成セミナーなどではよく「競合他社と比べてあなたの強みはなんですか?」という質問を投げかけられます。

意図は分かりますが、質問のしかたがあまり的確ではないと感じています。
この言葉だと「競合他社が持っていない、あなた独自の強みはなんですか?」と受け取られてしまうからです。実際には、その業種に必要な強みを備えていますか?ということを考えて欲しいのです。

ほとんどの業種に数限りない競合他社がある中で(起業の中でいわゆるスタートアップはまれで、ほとんどはスモールビジネスのはずです)、「競合他社が持っていない独自の強み」などないでしょう。あったらそれこそ埋もれたユニコーン企業です。それは奇跡的なことなので、もしそうでしたら是非ともそれを埋もれさせないで世に出して欲しいのですが、そういう選ばれし者以外が生き残る方法をお伝えするのが当サイトの目指すところです。

例えば、美容室の「強み」の一つに「立地」があったとして、はたして今、商売が成り立つだけの需要があるのに美容室が存在しない「立地」があるでしょうか? では、競合と差がつかないからといって、その「強み」は無意味でしょうか? そんなはずはないですよね? それがなければ、そもそも勝負にならないくらい重要な要素のはずです。そう考えると、「立地」は強みではなく必要条件です。

いくら独自の強みを持っていたとしても、人里離れた山奥に立つ美容室に採算がとれるだけのお客様が来るでしょうか? それよりは独自の強みはなくても駅前のスーパーの向かいにある美容室の方が、もうけは出るのではないでしょうか?
この例以外にも、業種によって「必要な強み」はいくつもあるはずです。それを概ね揃えた上で、「+αとなるものはありますか?」というのが冒頭の問いの意味するところのはずです。

もちろん、創業セミナーなどの先生は皆、そんなことは百も承知で「競合他社と比べてあなたの強みはなんですか?」と投げかけているわけですが、前提知識がないと真意が上手く伝わらないこともあるのです。

初心者のうちは「独自の強み」などなくて当たり前です。まずは、当たり前に「必要な強み」を押さえるところからはじめましょう。負けないためには、それだけでも十分です。

レアアイテムを探すのではなく、死なないために必ず持っているべきアイテムをピックアップして、それを手に入れることを考えるべきなのです。例えば、エリクサーをダンジョンに探しに行くのではなく、ポーションと毒消し草を道具屋で買いましょうということです。

では、「その業種にとってのポーションや毒消し草はなんだろう?」という疑問の答えをどう探すべきかですが、これは別の記事「目的にあった事業を考える」にも書きました

【J-Net21】の「業種別開業ガイド」で該当する項目(関連業種についても読んでおくと役に立つことがあります)を読んで大まかなイメージを持ってから、できればその業種の起業・開業に関する書籍か、なければ一般的な起業・開業に関する書籍を1、2冊は読むこと

起業の目的にあった事業を考える

が、まずはじめにやることです。その後で、「(業種名) 廃業」や「(業種名) 失敗」などで、失敗の原因を探すこともおすすめです。何が足りなくて失敗したのかが分かれば、何が必須なのかが分かります。競合との関係はその後に考えることです。

あなたの事業が軌道に乗っていけば、あなた独自の強みは自ずと現れてきます。

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