どちらにするか

法人の種類(株式会社か合同会社か)を決めるポイント



投稿日:2022年4月11日 | 最終更新日:2022年5月6日

今は迷ったら合同会社

株式会社か合同会社か

以前は「迷ったら株式会社」と言われていましたが、現在は「迷ったら合同会社」といっても良い状況です。

株式会社も合同会社も営利法人であることは変わりませんが、一番大きな違いは「所有と経営が分離している(株式会社)」か、「所有と経営が一致している(合同会社)」です。

先にほんの少しだけ、営利法人とそれ以外の法人についてご案内しておきます。


法人の種類

営利法人

営利を目的とする法人で、非営利法人と異なり社団法人しか認められていません。

つまり、「利益を上げることを追求する人の集まり」です。とはいっても、1人でも営利法人は作れます。

非営利法人

営利法人に対する概念で、営利を目的としない法人です。こちらは財産を基盤とする財団法人も認められています。

非営利法人には一般社団法人、一般財団法人、公益法人、NPO法人、中間法人、社会福祉法人、学校法人などがあります。

一般的に起業する際に非営利法人を設立することはありませんが、社会福祉法人、学校法人など、その種類の法人にしかできない事業もありますので、その場合は該当する法人を設立することになります。ここでは詳しくは触れません。


営利法人の種類

起業するために法人を設立するというと、一般的には事業を行う目的は営利ですから営利法人であるいわゆる会社を設立することになります。

会社には株式会社、合同会社、合資会社、合名会社、合弁会社がありますが、合弁会社は複数の企業が協働で行う形態であるため、起業を考えたときに候補となるのは株式会社、合同会社、合資会社、合名会社です。しかし、無限責任社員が存在する合資会社と合名会社にするメリットは通常あまり考えられないため、実質的には株式会社が合同会社を選ぶことになります。


所有と経営の分離(株式会社と合同会社)

株式市場

株式会社、合同会社の違いを簡単に言うと、株式会社は持ち主(出資者=株主)と経営者が分離しています。実際には同じことも多いですが、仕組みとしては分かれています。

このため、経営に関する手続が厳格に定められています。つまり、面倒な手続が多いのです。例を挙げると、株主総会の手続決算の公告取締役などの役員に任期が定められている等です。

他方、合同会社は持ち主(出資者=社員)と経営者が分離していません。出資者である社員が業務を執行します。

このため、株式会社に比べて、経営に関する手続がそれほど厳格ではありません。
簡単に言うと、家族経営の会社や一人会社などの実態に近い運営ができると言うことです。社員総会は株主総会ほどの煩雑な手続は必要ありませんし、決算の公告をする必要も役員の任期の制限もありません。近年、大企業でも合同会社化したところがあるのはこのためです。Apple Japan合同会社、Google合同会社、アマゾンジャパン合同会社などのGAFAだけでなく、合同会社 西友やフィリップ モリス ジャパン合同会社、アイロボットジャパン合同会社なども良く知られています。


株式会社と合同会社の違い

株式会社と合同会社の違いを簡単に表にしました。

 株式会社合同会社
資金調達所有(株式)と経営が分離しており、広く出資を求める場がある(株式市場)所有(出資)と経営が一致している
設立費用定款の認証手数料3~5万円(資本金の額による) 登録免許税15万円~(資本金の額による) このほか、電子定款にしない場合は収入印紙代4万円登録免許税6万円~(資本金の額による)
設立手続定款の認証後に設立登記設立登記のみ
運営手続決算公告が必要決算公告不要
社会的信用高い株式会社に比べると認知度や信用度の面でやや劣る

資金調達

先に書いたことの繰り返しになりますが、株式会社は所有と経営が分離しています。これは何を意味するかといいますと、「資金調達がしやすい」ということです。株式という形で広く出資を求めるために、所有と経営が分離しているのです。

逆に言うと、広く出資を求める必要がない場合は、株式会社にする必要がないということになります。自己資金と融資でまかなえるのなら、株式会社にしなければならない理由はありません。


設立資金

また、株式会社は設立の際に合同会社よりも費用がかかります。

定款の認証手数料(資本金の額による)3万円~

登録免許税15万円~(合同会社の場合は6万円~)

さらに、設立手続も合同会社よりも煩雑なので、専門家に依頼した場合の手数料もかかります。


運営費用

運営費用も株式会社の方がかかります。

決算公告についても官報に掲載してする場合は6万円~、日刊紙に掲載してする場合は50万円~、ホームページでする場合には基本的に費用はかかりませんが、決算書類の全文を決算承認から5年間掲載する必要があります。

役員の任期についても、再任用はできますが、改めて登記をしなければなりません。そのための費用もかかります。登録免許税1万円~、司法書士に依頼する場合はその費用もかかります。


合同会社の社会的信用度

信用力

合同会社の社会的信用度ですが、現在ではそれなりに上がってきており、一般的な取引で支障を来すことはほぼないレベルにまできていると感じられます。前述のとおり、名の知られた合同会社もありますし、株式会社も合同会社も資本金1円、社長1人から設立できるという意味では信用度に差はないと知られてきてもいます。

将来的に株式を上場したい、会社を売却したいなどの目的がなければ、合同会社で問題はないと考えられます。別記事で紹介している「特定創業支援等事業」を受けた証明があれば、登録免許税は半額になるので、合同会社は最低3万円あれば設立できます。
手続についても、マイナンバーカードがあれば法人設立ワンストップサービスで全てできますので、非常に簡単です。特別な理由がない限りは、合同会社は有力な選択肢でしょう。


代表社員と名刺に書きたくない場合

合同会社の代表者の役職である「代表社員」の知名度が今ひとつ低いのが困るというお話はきくことがあります。

ですが、この理由もあまり重大なものとはいえないかもしれません。合同会社でも「社長」や「代表」、「CEO」などを名乗ることは何も問題ないからです。合同会社の法的な役職名「代表社員」があまり浸透しておらず、名刺などに記載するのに不便だというのでしたら、「社長」や「CEO」を使えば良いのです。

合同会社CEO

株式会社にする必要がある場合

繰り返しになりますが、

  • 株式による資金調達をする必要がある
  • 将来的に会社を売却する予定がある
  • 「代表取締役」の肩書きが必要(欲しい)

などの理由がある場合は、株式会社を選びましょう。

⇒ 法人設立に必要な事項を決める(株式会社編)

⇒ 法人設立に必要な事項を決める(合同会社編)