投稿日:2022年3月25日 | 最終更新日:2022年4月29日
初期費用を計算する

起業にあたっても先立つものが必要です。つまり、起業資金です。これがないと何もできません。
そもそも起業資金はいくら必要でしょうか? 実はこれは別記事の「事業計画を作る」ですでに大部分を作成しています。
あとは見やすい形にまとめるだけです。どのような形にまとめるかというと、下図のようになります。


「うわ、めんどくさ」と思われるのは正直な感想です。作り慣れていない方には非常に面倒くさいです。初期資金調達計画は必ず作りますが、3カ年計画は融資や投資を受ける際には必要です、というところです。
これらは一度ならず何度も修正することになることが多く、そのたびに計算根拠が分からなくなったりしますので、最初から、根拠を作れば表ができあがる表計算シートを使うのがおすすめです。
「それはどこで手に入るの?」といわれますと、当サイトの会員登録をされるか、当社のオールインワン起業アプリ「TheFlow」のご利用登録をしていただければ、このページ下のボタンからダウンロードできます。
どういう手順で積算していくか、このExcelファイルを使ってご説明します。
このExcelファイルをダウンロードされなくても、同様の計算をしていただければ大丈夫ですが、一から作るのはかなり面倒ですので、ダウンロードされることをおすすめします。無料ですので、ぜひ使ってください。
Excelファイルには6枚のシートがあります。

このうち、「事業計画書用各種表(円)」、「事業計画書用各種表(千円)」のシートは自動計算されます。
入力は基本的に「第1期」、「第2期」、「第3期」の各シートに行います。
最初にC1の濃い黄色のセルに創業予定日を入れましょう。例:2022/01/02
豆知識ですが、設立日を1日以外にすると、初年度の法人住民税の均等割が1ヶ月分(設立月分)減額になりますのでおすすめです。
7万円の場合7万円×11/12で64,100円(百円未満端数切り捨て)になります。このExcelファイルでは法人税は簡易計算になっていますので、厳密な計算が必要な場合は、適宜修正してください。
おすすめの手順は、固定費から入力することです。
シートの全体図はこうなっています。

「あ~もう嫌だ~」と思われましたよね? 大丈夫です。順番に入れていけば、終わります。
固定費は概ね次の部分です。

広告宣伝費など一部変動費が入っていますが、そこは後で「売上」を入力する時に一緒に入力します。変動費は売上を作るために必要なお金なので、売上と連動して計算すると分かりやすいからです。
まずは「人件費、家賃地代、リース料、通信費、水道光熱費」など、分かっているものを入れていきましょう。水道光熱費、通信費などが売上と連動する場合は後で入れてもかまいません。
人件費の内、社会保険料の法人負担分が分からないときは、簡単にシミュレーションを出してくれるサイトが参考になります。例えば次のようなサイトです。
手取り計算|月収と年収のシミュレーション | ファンジョブ (funjob.jp)
薄い黄色のセルだけ入力すれば、グレーのセルは自動計算されます。
ここが終わりましたら、次は売上の入力に入りましょう。 下図の部分です。

「どれだけ売れるかな!」と考えるのは楽しいですね。ただ、この部分が一番予想どおりに行かないところではありますし、事業計画の目的・提出先によって変える事が多い部分です。ですので、計算の方法を統一しておくと楽です。
そこで、このシートでは簡単に方法を紹介してあります。それが「【売上・原価・広告費】簡易計算シート」です。

このシートもグレーの部分には計算式が入っていますので、薄い黄色のセルに数字をいれてシミュレーションしてみてください。計算式はあなたの事業にあわせて変える事ができます。
商品・サービスが複数有る場合は、上書きすると分からなくなってしまいますので、シートを増やして使うことをおすすめします。
このシートで売上、原価、広告費を計算したら、第1期のシートに戻って、売上と売上原価の部分を埋めてみてください。
それが終わったら、その他の収入と支出の部分を入力します。
その他の収入は主に出資や借入、補助金などです。

現実的に借りられる額、受けられそうな補助金の額を入れてみてください。
金融機関からの融資を受けるには自己資金が3割程度必要です。それを考慮に入れて、借入希望額を決めましょう。
役員(自分)の欄は、1年目は空欄にしておくことをおすすめします。必要な自己資金は、入力が終われば「事業計画書用各種表」シートの「初期資金調達計画」の「自己資金」の欄に自動計算されます。
その他の支出では、「事業計画を作る」で考えた設備投資や物件の敷金・保証金、借入の返済額などを入力します。減価償却費も入れておきましょう。

ここまでで自分でシミュレーションして入力することが難しかったら、専門家の力を借りましょう。
起業する前に予算・決算に関わる仕事や新規事業の立上げなどの経験があれば別ですが、未経験で一からやるのはかなり努力が必要です。
その努力をしている時間をお金で買う(専門家に頼む)のも一つの方法です。 ただ、内容は理解できるようにしておいてください。お金の動きを把握することは、経営の根幹です。
使える自己資金を確認する

入力を終えれば、この表ができあがっているはずです。

この表のL3セル、「自己資金」は自動計算されています。必要資金の内、「親戚・知人等からの借入」、「金融機関からの借入」、「出資受入」、「その他(補助金・助成金等)」でまかないきれない金額が「自己資金」になります。
ここに計算された「自己資金」は、あなたの金融資産のどのくらいを占めますでしょうか?
足りない場合は最初から考え直しが必要ですが、ほぼ全額というのもいけません。
ここで計算された自己資金は、その額をあなたの金融資産から差し引いても、2年分程度の生活費が残る額であることがベターです。最低でも1年分の生活費は確保してください。
それができないなら、再計画が必要です。起業はギリギリでやるべきではありません。もし失敗したとしても、再起する余力を残しておくことが成功への道です。
この1~2年分の生活費を除いた額が、本当の「使える自己資金」です。これはいわゆる「本当の締め切り」と同様の「本当の自己資金」です。
前項で書いた「金融機関からの融資には3割程度の自己資金が必要」の自己資金とは分けて考えてください。 「使える自己資金」で資金がまかなえない場合は、他の方法も検討する必要があります。
調達が必要な額を算出する

前項までの計算で資金が足りなかった場合、まずやるべきは再計算です。事業計画のどこが甘いのか、下げられる費用はあるか、大風呂敷を広げすぎていたらスモールスタートする方法はあるか、考えてみましょう。
自分一人で分からない場合は、専門家の知恵を借りましょう。大事なことなので2回目です。
起業のための事業計画作りや資金シミュレーションは、人生でそう何回もやることではありません。
勉強しないと分からないけど1回しかやらないことは、それを何回もやっている専門家にやってもらうのも一つの効率的な方法です。
お金で時間を買うということです。今は起業支援が手厚いので、無料で相談に乗ってくれる機関もあります。ただし、無料相談はあくまで相談で、通常は相談者の代わりに手を動かしてはいけないとされていますので、代わりにやってもらいたい場合はやはりお金が必要です。起業すると、「人に頼んでお金を払う」場面は多々あります。
本当は、経営していくならこのくらいのシミュレーションはできないと…というところはありますが、そんなことを一度もやらずに成功している人もいます。
そういう人は天賦の才があるか、他にやってくれる人がいるのです。どちらでもないなら、自分でやるか、やってくれる人(起業支援専門家)を探しましょう。
今はお金をかけられず、無料相談でなんとかしたいというのでしたら、つたなくても中途半端でも自分で考えた分を入力していけば、分からない部分を相談することもできます。一番避けていただきたいのは、分からない部分を適当にカンで埋めることです。カンで埋めてしまうと、根拠をきかれたときに答えられませんし、あとからどこを修正すればいいのかも分かりません。 改めて必要資金を計算してもどうしても足りないとしたら、足りない額を調達する方法を考えましょう。
調達方法を検討する

自己資金、親戚・知人からの借入、金融機関からの借入、投資家からの出資、補助金・助成金で足りないときに、他に方法はあるかと考えてみましょう。
一番簡単に思いつくのが、クラウドファンディングです。
現在では、先行予約販売とほぼ同義になっているプロジェクトが多いので、気軽に利用できます。もちろん、本来の意味でのクラウドファンディング、All or Nothingタイプのものに挑戦して、本当に商品・サービスに需要があるか(魅力がある宣伝ができるか)を試してみるのも良いと思います。
あまり現実的ではありませんが、ビジネスプランコンテストなどに参加するという方法もあります。この場合、そのビジネスプランコンテストの趣旨にあった(主催者の好む)事業を、趣旨にあった形で提示出来るかということが重要になります。また、好まれる応募者かというのも本音の部分では結果を左右します(何らかのコンペティションの主催をする側になったことがある場合には分かりますよね)。
- 分かりやすい事業内容で(商品やサービスは新しく見えるが、ビジネスモデルは従来どおり等)
- 主催者の意図にあっている(企業主催のものならばその企業にメリットがある、行政のものならば、その地域等にメリットがある)
- かつ、応援したくなる応募者である(対象者のペルソナにぴったり合っている、履歴に物語がある、分かりやすいエリートである等)
ならば、挑戦してみる価値はあるかもしれませんが、時間と手間がかかり、費用対効果が低いので、時間に余裕のある学生の方か、主催者から声をかけられた場合以外は、あまりおすすめしません。
ですが、上手くいった場合は宣伝効果もありますので、コンテスト系が得意な方はやってみるのも一案です。そこで支援者が見つかる場合もあります。
起業前に申請できる補助金を調べる

補助金・助成金は基本的に後払いなので、起業時の資金調達方法としては最適とは言えません。ただし、起業前に申請でき、交付時期が早い補助金・助成金もありますので、調べておいて損はありません。
創業者向け補助金・給付金(都道府県別) | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト] (smrj.go.jp)
起業・開業予定地の役所や商工会議所・商工会に相談すると情報を教えてもらえる事もあります。
起業時に使える補助金・助成金については、別記事で詳しく紹介しています。
