投稿日:2022年3月25日 | 最終更新日:2022年4月29日
提出先に合わせた事業計画書を意識する

なんのために事業計画書を作るのかといえば、何らかの目的をもって、どこかへ提出するためでしょう。自分のためだけに作る方もいるかもしれませんが、そういう場合はかなりまれです。通常は目的、提出先があるから作成します。
そこで大事なのが、「どの目的でどこへ出すのか」です。提出先にあわせた事業計画書を作ることです。
別記事「資金調達を考える」で作成した「事業計画書用各種表」があれば、資金面での計画は十分です。
どんな目的のどんな形式でも、当てはめて作成することができます。融資を受ける際にも、「3カ年計画」と「初期資金調達計画(運転資金6ヶ月)」の2表を提出すれば事足りるでしょう。
ただし、目的によって多少バリエーションをつけた方がいいこともあります。それについては次項で触れます。
他は、「事業計画を作る」で考えた内容と、最初に確認した「起業する目的」を、用途に合わせてアレンジすれば大丈夫です。用途に合わせてアレンジというと漠然としていますので、目的・提出先によってどう異なるのか、実例をお示しします。
まずは取扱商品・サービスについて、A.日本政策金融公庫の創業計画書とB.小規模事業者持続化補助金の経営計画書兼補助事業計画書、それぞれの「取扱商品・サービスの内容」の記入例を見てみましょう。
日本政策金融公庫は、創業時に融資を申し込む金融機関としては、第一選択といえるところです。
小規模事業者持続化補助金は、創業後に初めて申請する補助金としておすすめです。
A. 日本政策金融公庫の創業計画書

B. 小規模事業者持続化補助金の経営計画書兼補助事業計画書

A.は洋風居酒屋の例、B.は海鮮居酒屋の例ですが、業種としては同じとしていいでしょう。
目的・提出先によって、書き方にはこのくらいの差が出ます。ちなみに、B.はこの程度の内容ではまず採択されません。
次にセールスポイントの記入例です。
A. 日本政策金融公庫の創業計画書

B. 小規模事業者持続化補助金の経営計画書兼補助事業計画書

次は、市場を取り巻く状況についてです。
A. 日本政策金融公庫の創業計画書

B. 小規模事業者持続化補助金の経営計画書兼補助事業計画書

最後に、販売戦略です。
A. 日本政策金融公庫の創業計画書

B. 小規模事業者持続化補助金の経営計画書兼補助事業計画書

目的・提出前によって書き方をアレンジする必要があることは、ご理解いただけたかと思います。
「A. 日本政策金融公庫の創業計画書」はお金を借りるための計画書、
「B. 小規模事業者持続化補助金の経営計画書兼補助事業計画書」はお金をもらうための計画書ですので、 Bの方が難易度が高くなるのは当然です
が、もう一つ、相手が求めるものが違います。それについては次でご説明します。
資金計画は理想・現実・厳し目の3バージョンを作る

「資金調達を考える」で作成した資金計画についても、できることなら目的に合わせて3バージョン、少なくとも2バージョンは作った方がいいでしょう。
バージョンの違いは、
A.理想的な売上達成、B.現実的な売上達成、C.厳しめの売上達成です。
少なくとも、BとCのバージョンは作っておきましょう。
目的が融資の申込みの場合はC又はB、補助金の申請の場合はB、投資の依頼やビジネスプランコンテスト応募の場合はAを使います。
C.金融機関が重視するのは、あなたの事業の成長性ではなく堅実性なので、売上が厳しい場合でも返済できる計画を見たいと思っています。
B.補助金の場合は、あまり厳しい予想だと補助金を交付する意味がないので、多少は色をつけたいところですが、非現実的だと思われてしまうとそれはそれでマイナスなので、現実的なところを書きます。
A.投資やビジネスプランコンテストは、ある意味、あなたの意欲と夢を見せるところですので、楽観的、理想的な売上予測で行きましょう、ということです。
起業の動機をきれいな心でリライトする

「人に指図されずに生活費を稼ぎたい」等の創業の目的を、きれいな心で書き直してください。
下のような感じで大丈夫です。これは日本政策金融公庫の創業計画書の見本です。

ポイントは、
- 「これまでの経験を活かす」こと
- 「タイミングが良い」ことを示すこと
- 「事業が順調にいくだろう理由」があること
です。
これらを盛り込んで作ってみてください。
考えた「事業に必要な強み」を3つ選んでセールスポイントを書く

先ほど例に挙げた中で「商品・サービスについて」はそのまま列挙すれば良いので問題ないでしょう。
では、セールスポイントはどう書くかです。
別記事「事業計画を作る」で考えた「事業に必要な強み」を3つ選んでください。とりあえずこれだけでも、日本政策金融公庫の創業計画書であれば終了です。
他にもっと詳細に書く必要がある場合は、その3つについて、それぞれそう思う理由や効果など、派生することを書けば良いのです。
例えば、日本政策金融公庫の創業計画書の例にあった
・ワイン、ビール、オリジナルカクテル等200種類のドリンクを提供する。
をセールスポイントとしてあげるなら、
「ワイン、ビール、オリジナルカクテル等200種類のドリンクを提供する。当店はお酒を楽しんでもらう店として、近隣では一番の多種類を揃える。特にワイン、オリジナルカクテルについては、立地から女性のお客様が比較的多くなることを考えて力をいれる。また、将来的にはワインの販売も手がけたいと考えており、そのためにもワインの種類を揃え、そのワインで作るカクテルを紹介することで、認知度を上げると同時にリサーチも行いたい。」
という感じに付け足していきます。
考えた「ターゲットにリーチする方法」を3つ選んで販売戦略を書く

販売戦略についても、「事業計画を作る」で考えたターゲットにリーチする方法を3つ選びます。
日本政策金融公庫の創業計画書であれば、ターゲットとリーチする方法を書けばいいので、これで終わりです。
他に詳細を書く場合は、同じように肉付けをすれば良いのです。
「価格だけで勝負するのではなく、お酒を良い雰囲気で楽しんでいただく時間、体験の価値を一人でも多くのお客様に伝えるために、以下の販売戦略を実行する。
ワイン、ビール、オリジナルカクテル等200種類のドリンクを毎日、1つずつ、SNSで紹介する。掲載する写真は、上質な時間を想起させるものとし、うんちくやエピソードもうるさくない程度に添えて、楽しんでいただけるものを心がける。SNSで繋がったお客様からのフィードバックに合わせて改善を続け、よりよいコミュニケーションを図る。紹介したドリンクはその日の特典を用意する。
季節に合わせたカクテルと新メニューを考案し、クーポン付きのチラシを10㎞県内にポスティングする。併せて、地域のフリーペーパーにも掲載を依頼する。」
SNS、ポスティング、フリーペーパーで肉付けができました。
事業の「型」から市場や競合の状況をもってくる

実店舗がある場合は、周辺の同業種がいくつあるか、その店が賑わっているかなどを見て、そのまま書きましょう。日本政策金融公庫の創業計画書の場合は3行しかありませんし、これで終わります。
実店舗がない場合や、もう少し詳しい内容が必要な場合は、とりあえず「業種名 状況」とや「業種名 先行き」、「業種名 変化」等、思い当たるキーワードで検索して、出てきた状況や数字をいい感じにコピペして文章を繋げます。
そんなことでいいのか、と思われるかもしれませんが、よほど的外れなことを書いていなければ、そこを細かく調査する人はいません。論文やコンテストに応募する作品ではありませんので、そんな厳密なものではありません。
一つ注意すべき事は、ここの「市場や競合の状況」は自分の販売戦略や販促計画に都合の良いものにすることです。
何が言いたいかというと、「リモートワークでオフィス街のランチ人口が減っている」と書いておきながら、「ランチの混雑に対応するため席数を増やす」という戦略をとったら状況と合っていないと思われるのではないですか?ということです。
「自分の戦略に都合の悪い状況は書かない」ということに注意してください。
ここまでやってきたなら、きっと説得力のある計画書が書けているはずです。
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